不満が勝手に増幅しない会社をつくる ~ ルールがすべてではありません

ある会社(A社)のある部署に、30歳前後の女性が2名いました。他には男性が6名。女性のうち一人は、結婚していて小さな子どもがいます。一人は独身です。

その会社は、9時から18時までが基本の就業時間ですが、フレックスを導入していたので、周りのメンバーと調整すれば勤務時間をずらすことが可能でした。

既婚で子育て中の女性社員がいいます。

「子どもを迎えに行かなければいけないので、16時には帰りたい。その代わり7時に出社して、やることはきちんとやっているし、周りに迷惑はかけていません」

独身の女性はいいます。

「私も同じ女性なので、彼女の言い分は理解できるし、理解しようと思う。でも、結局夕方以降の仕事は全部自分に回ってくるし、外出しなければいけない用事も自分に回ってくるし、なんだかんだいって仕事が増えて、残業が増える。私だって早く帰りたい日があるけど、そうもいかない。しょうがないけど、でも、どうもスッキリしない」

結局、独身の女性は、だんだん不満を募らせて、退職してしまいました。

一方、こんな会社もあります。

小さな不動産管理の会社(B社)で、全体の7割ぐらいがシングルマザー。社長がシングルマザーなので、そういう女性が多い会社でした。

この会社にはフレックス制度はありません。その代わりというか、子どもが熱を出したとか、幼稚園の行事があるとか、そういう理由で遅刻、早退、中抜け何でもOK。もちろんお休みもという会社です。それは規則というよりは、暗黙の了解みたいなものでした。

さて、この会社にも、30歳前後で既婚子育て中の女性と、独身の女性がいました。

既婚で子育て中の女性社員がいいます。

「子どもを迎えに行かなければいけないので、16時には帰りたい。急に子どもが熱を出すこともあるので、お休みを頂くこともある。でも、できる限り、周りには迷惑をかけないようにしたいし、自分が代わりにできるときは、喜んで代わります。お互い様ですから」

独身の女性はいいます。

「私も将来同じような状況になるし、そうなったら協力してもらわなければいけないので、できる限り協力します。時々、負担になるときもありますけど。でも、子育てとは関係ないけど、自分が休みたいときや早く帰りたいときは協力してくれるし、みんなで助け合って仕事するのはいいと思います。こういう会社なら、自分が結婚して子育てする時も安心です」

さて、この二つの会社では、何が違うのでしょうか?

子育て中の女性が働けるようにするルールは、A社の方が整備されています。子どもの行事などで休みが取れる制度や、産休、育休のルールもきちんとしています。一方、B社の方は、特に明確なルールがあるわけではありません。産休、育休もありますが、ルールで決めるというより、そのときの状況で話し合って決める感じ。早退や遅刻も同様です。

ここだけを見ると、A社の方が断然優れているし、うまくいっているように思えるかもしれません。

でも実際は反対です。明確なルールができているA社よりも、ルールのあいまいなB社の方がうまくいっています。

なぜか?

それはリーダーの違い。B社の社長は、自分もシングルマザーでいろいろ苦労したので、同じ境遇の社員が少しでも働きやすくなるように、みんなで協力してやっていこうということを、しつこく熱く呼びかけています。お互い様なんだから、いろいろ協力し合って、助け合ってやっていこうと努力しています。

そういうリーダーの姿勢があるからこそ、協力することが当たり前の会社になっているのです。

その結果が、社員のコメントに見事に表れています。

ルールがはっきりしていなくても、社長のリーダーシップによって、いい関係がつくれているのです。

一方、A社の方は、ルールはしっかりしていますが、リーダーシップが欠如しているため、「ルールなんだからOK」がまかり通っています。

それが、2人のコメントにも表れています。

既婚の女性は、早く帰ることを当たり前の権利だと思っている。早く帰る分、早く出社しているし、ルール通りなんだから何も問題はないと思っています。ある意味ではそうかもしれませんが、現実的にはもう一人の女性にしわ寄せがいっているので、「ルール通りなんだから何も問題はない」ということではありません。

独身の女性もルール通りなのは理解しているし、いろいろ事情があるのだから協力しようという気持ちもある。でも、ルール通りだからといってすべてに納得している訳ではないのです。

この、「理屈では分かるんだけど、どうもスッキリしない」というようなことは、他にもあります。

ルールをつくればそれでいいのかというと、そうではないのです。どんなに素晴らしいルールができても、どこかスッキリしないことが必ず出てきます。

そのスッキリしないことを納得させるのが、リーダーの仕事です。

「どうもスッキリしない」と、やや不満が強めなところを、リーダーの力で、「まあいいかなと思っている」と、納得させるのです。

この例でいえば、B社の社長のように、「みんなで協力してやっていこう」ということを、しつこく熱く呼びかけることです。「お互い様なんだから、いろいろ協力し合って、助け合ってやっていこう」と常に呼びかけることです。

場合によっては、子育て中の女性に対して、「独身の女性がこんなに協力してくれているんだぞ」と話をすることが必要かもしれません。「協力してくれている独身女性に感謝しなきゃいけないよね」と伝えておくとよいかもしれません。

逆に、独身の女性に対しては、ねぎらいの言葉をかけてあげる。あるいは、既婚女性の苦労を代わりに語ってあげて、「お互い様なんだから協力していこう」と呼びかける。「それは自分のためでもあるでしょ」と視点を変えられるように投げかけることも必要かもしれません。

まあ、面倒だし、手間がかかるし、エネルギーが必要です。

でも、そういうことをやらないと、うまくいかないことがたくさんあります。

ルールをつくれば、それで全てがスムーズにうまく回るのかと思ったら大間違い。

ルールはルール。

うまく回すためには、機械と同じように、スムーズに回るように油をこまめに差したり、定期的にメンテナンスしたり、時には部品を交換したり、いろいろな手間がかかるんです。何もしなかったら、どんなに素晴らしい機械も故障します。

ルールも同じです。

何もしないでいると、どこかに不満がたまっていき、どこかで爆発します。退職者が出るとか、もめ事が起こるとか、業務が滞るとか。

それを防ぐのはリーダーの役割です。

組織はリーダー次第。

ルールだけではダメなんです。

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