塾講師で学んだ、人材育成のポイント(事例編)

大学生の時、塾講師のバイトをしていました。1年生の秋に始め、その後卒業するまでの3年半、ほとんど休まずやりました。どうすれば生徒がいい点を取ってくれるのか、日頃の授業で試行錯誤し、徐々にコツをつかんでいきました。今になってみると、そのとき学んだことは、職場でリーダーとして、上司として、他のメンバーと接するときに大いに参考になるものでした。

最初は物わかりのいい、生徒たちに好かれるような講師になろうとしました。ベテランの先輩の授業を見ると、冗談を言い合ったりして、楽しげにやっています。活気もあるし、楽しそうなので、それを真似してみたのです。

ところが、私が冗談をいったり、楽しく授業を進めようとすると、歯止めがききません。だんだん生徒が私のいうことを聞かなくなって、収拾がつかなくなります。大騒ぎになったところに、塾長が現れて、「お前たち、静かにしろ!」と一喝。おかげでそのあとの授業を無事進めることができました。

当然、授業終了後には、塾長から注意されました。

「面白くしなくていいですから」

当たり前ですね。

で、先輩のアドバイスなどを聞いて、次の段階は、冗談の一つもいわず、とにかく厳しい鬼講師になりました。ちょっとでもサボろうとしたら怒りの鉄拳、、、鉄拳はなかったと思いますが、しかり飛ばす。ちょっとでもミスしたら、何やってるんだと罵倒。何度も同じミスを繰り返したら、何度同じ間違いを繰り返したら気が済むんだと嫌み攻撃。

ちょっと大げさですが、一寸の隙も見せず、とにかく厳しく、鍛え上げようとしたのです。

するとどうなったか。

通信簿で“5”をとるような生徒は、それなりに頑張っていました。”4”をとるぐらいの生徒も、まあそんなものでした。”3”の生徒も同様。ですが、何とか頑張って”4”とか”3”になっている生徒は、残念なことに1つ下げてしまう生徒も散見されました。

反対に、いつもは”3”だけど”4”になったとか、”2”だけど”3”になったというような生徒は皆無でした。

どうしてでしょう?

これだけ厳しくやっているのに。。。

あとで分かったことですが、この頃の私の授業は、生徒たちにとっては受けたくない授業だったようです。まあ、そりゃそうですね。自分でも受けたくありません。あんなんじゃ、やる気にならないのは当たり前。

最悪だったのは、私の行為は、生徒たちの頑張ろうという気持ちをへし折っていたのです。

私が担当していたのは数学でした。数学は苦手意識をもつ生徒が結構います。よく分からないし、いい点とれないし、数学は苦手!そういう生徒が結構います。

私は、そういう苦手意識を持つ生徒に対しても、「お前何やってるんだ」「何度間違えたら気が済むんだ」「こんなこともできなくてどうするんだ」と叱責し、罵倒し、生徒たちを追い込んでいたのです。

これでは、何とか頑張ろうと思っている生徒でさえ、やる気がなくなってしまいます。「どうせ私は数学は苦手」「自分は数学なんてできるようにならない」もう、悪循環です。

私は、一生懸命、よかれと思って厳しくしていたのですが、その結果は、よくてその生徒の持っている力そのままの成績、多くの生徒は力を出し切れずに終わっていました。全然、生徒たちの成績を伸ばしてあげられていなかったのです。厳しく、びしびしやっていたんですけど。。。

反対に、できる子に対しては、「よくできた」と褒めていましたが、それ以上のことはしませんでした。できているのだから、褒めておけばいいだろうぐらいの感じです。すると、こちらもまた伸び悩むんですね。

どうしたらいいんでしょう???

悩める私に、先輩たちはいろいろとアドバイスをしてくれました。

「できる子は、もっとできるんだから、もっとハイレベルな問題にチャレンジさせてもいい」
「できない子は、高望みしなくていいから、基本をきちんと押さえる」
「要は、その子のレベルに合わせて指導して、その子が少しでもレベルアップできるようにすることが大事」

言葉にすると当たり前過ぎるんですが、そういうことでした。その後、自分でも試行錯誤して、ようやく少しずつうまく回り始めるようになりました。

できる子に対しては、あまり褒めなくなりました。普通の問題ができたからといって、褒めません。特に自信を持ってる生徒、調子に乗りそうな生徒は褒めません。そういう生徒に対しては、少しでも間違えたら、「何やってるんだ」と罵倒。悔しがって、次は間違えないようにするからです。

ただ、言い方は少し工夫しました。「お前ならできるはずなのに、何を間違えてるんだ」と、ダメ出しをするというよりも、「本当はできるはずなのに」というニュアンスを伝えました。

同時に、「こんな問題ができるのは当たり前で、みんなならもっとハイレベルの応用問題もできるはずだ」とそちらもドンドンやらせました。

ハイレベルな問題に取り組んだ場合は、できていれば「よくできた」と褒め、できない場合は「これはハイレベルだから仕方がないけど、できるようになるはずだから頑張れ」とあおりました。

言い続けたのは、「もっとできるはずだから、頑張れ」ということでした。

苦手意識のある生徒に対しては、凡ミスをしても叱りません。「ここをこうやったから間違えてるけど、そこだけ直せば合ってるぞ!できるできる!」と、なるべく自信をなくさないようにしました。苦手意識のある生徒には、「基本に忠実に、できるところを間違えないようにすれば、平均点ぐらいはとれるぞ」と言い続けました。「焦らずに、自分のやれることをしっかりやれば、平均点は当たり前、うまくいけばもっととれる!」そんなことを言い続けました。

間違えたとしても、「これはケアレスミスで、本当はできるはずだ!」

何度も同じ間違いをしたら、「次はできる!!」

やっとできたら、「ほ~ら、できただろ!!!」

こんなことを言ってると、甘やかしているように思われるかもしれません。調子に乗るんじゃないかと思われるかもしれません。でも、そんなことはありません。自分は数学が苦手だ、自分はできないと思っている生徒にとっては、多少褒めることは、成長する上で必要なエネルギーです。自信の持てない子を褒めることで、自分もそれなりにできるかもしれないと少しずつ自信を持つようになり、より熱心に数学の勉強に取り組むようになるんです。

結局、できる子に対して言い続けたのは、「もっとできるはずだから、頑張れ」ということでした。

苦手意識を持っていて、出来のあまりよくない生徒に対して言い続けたのは、「もっとできるはずだから、頑張れ」ということでした。

ついでにいうと、そこそこできる子に対して言い続けたのも、「もっとできるはずだから、頑張れ」ということでした。

できていないところ、間違えているところについて、「どうすればできるようになるのか」ということもいいましたけど、それよりも強調していたのは、「もっとできるはずだから、頑張れ」ということでした。

おかげさまで、担当していたクラスを全体的に底上げすることができ、任されるクラスの範囲も広がりました。塾長が認めてくれたということです。

授業も、時には冗談を言ったり、楽しく進められるようになりました。もちろん、羽目を外しそうになったら、しっかりと元に戻せます。伸び伸びやらせつつ、締めるところは締めるということができるようになったのです。

で、冒頭にも書いたとおり、ここで学んだことは社会人になってから、特に人の上に立つようになってから役に立つことでした。

塾講師として学んだことが、社会人、特にリーダーや上司としてどう生かせるのか。

長くなりましたので、次回「塾講師で学んだ、人材育成のポイント(解説編)」としてまとめてみたいと思います。

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