社員のわがままを聞く
昨日の、適材適所を書いていて思い出したことがあります。
自己申告でも、社内FAでもいいんですが、とにかく社員の希望は聞いてはならないというのです。
サラリーマンは、給料をもらっている以上は、会社からの命令に逆らうことはできない。どんな部署であっても、どんな仕事であっても、会社からいわれたら、それをやるべきだというのです。
自分のやりたいことをするなんて、それは仕事じゃない。お金をもらえるのは、イヤなことをするからだ。そういうのです。
組織として仕事をする以上、個人の希望なんて聞いていられない。足並みが揃わなくなるから。そういうのです。
ん~、そういう考え方もあるか・・・
しかし・・・
これじゃ、働くことが楽しいわけがない・・・
もちろん、働くことが“楽しい”というのは、危険な表現です。“楽しい”ということを誤解する人がいるからです。
しかしながら、社員にイヤなことをさせて、それで組織としての力が発揮できるとでもいうのでしょうか。
イヤイヤやっていることが、いかに生産性の上がらないことか、誰しも経験があるはずです。
逆に、自分の好きなこと、熱中できることをやると、思わぬ力が発揮できる経験もです。
それなのに、冒頭のような考えが、未だに残っている・・・
もちろん、相手によっては、仕方ないことかもしれませんが。常識のない人、責任感のない人、やる気のない人、世の中にはいろいろな人がいますから。
しかし、そのような人がいるからといって、多くの常識ある人、責任感のある人、やる気のある人をないがしろにしてもよいのでしょうか?
思うに、大抵の人は、自分の要望を聞いてもらったら、相手の要望も聞こうと考えます。何か恩恵を受けると、そのお返しをしなければならないと自然に考えます。
これは、自分の感覚的なものですが、学問的にも証明されているもので、返報性の法則といいます。私は、これをアメリカの社会心理学者であるロバート・B・チャルディーニが書いた『影響力の武器』で知りました。その本によれば、アルビン・グルドナーという社会学者も徹底的な究明を行って、このルールが社会に存在していると報告しているそうです。
とにかく、この感覚は、一部の例外があるとしても、普遍的なものだということです。
とすれば。
たとえ、社員のわがままであったとしても、それを受け入れてみてはどうなのか。
少なくとも、その社員は、それまで以上に働かざるを得ないのです。自分のわがまま(希望)を受け入れてくれた会社(上司)に対して借りができるので、それを返すために頑張ろう。自然にそうなるのです。
もっとも、気をつけるべきなのは、周囲への対応。その人だけを特別扱いしていると思われれば問題になりますから、事情をよく説明する必要があるでしょう。
でも、きちんとした理由があって、きちんとした説明をすれば、何も問題ないことです。むしろ、その他の人にもよい影響を与えるかもしれません。
「会社に申告すれば、きちんと聞いてくれるんだ」
そう感じて、モラールも高まるかもしれません。
それを実践しているのが、堀場製作所。
エンジン排ガス測定・分析装置の分野では、80%という世界トップのシェアを有する会社です。創業者で、現在は最高顧問の堀場雅夫氏は、とても有名な方ですから、ご存じの方も多いことでしょう。
この会社の社是は「おもしろおかしく」
社員たちのわがままも、柔軟に受け入れていくそうです。
「育児をするための在宅勤務」「自分のやりたいことをやれるようにする短時間勤務」「会社の中で英会話」
ドンドン社員たちのわがままを聞くことで、社員たちのモチベーションも上がり、業績も向上する。
そんな信念に基づいて、経営がなされているようです。
確かに、現実的には、難しいことも多いかもしれません。
しかし、現にそうやって成長している企業があるのですから。
猿まねはよくないかもしれませんが、よいところを取り入れることは大切。
是非、取り組んでみてはいかがでしょうか。
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