消費者の声は聞くべきか?
お客様は神様です!
そこまでいわなくても、商売をやっていれば、お客様を大切にすることは当たり前。お客様の声を反映させながら商売を展開していくことも当たり前です。
先日、ワタミの渡邉美樹社長が、自社の会議でコメントしているところをテレビでやっていました。その場でも、「『お客様は、常に正しい』これは、大原則!」という趣旨のことをおっしゃっていました。
たとえば、飲食店ですから「注文した」「注文しない」などということで、トラブルになることもあるでしょう。そうなったとしても、渡邉社長は、「常に、お客様が正しい。たとえ、録音してあって、こちらが正しいことが分かっていても」とおっしゃいます。
これは、サービス業ならではの発想かも知れません。
ただし、これも時と場合を間違えると、悪い方向に向かってしまうこともあります。
たとえば、物作りの場面。顧客の声をすべて聞き入れようとすると、結局、魅力の無いものができてしまったりします。顧客の声を取り入れていますから、悪い商品ではないのですが、でも、不思議なことにそれが魅力的になるとは限りません。
その一例として、映画『リング』のプロデューサーである一瀬隆重さんの話があります。
一瀬さんは、かつて、ハリウッドで、いわゆるハリウッドらしい映画を作っていたそうです。要するに、顧客に合わせて、商品を作っていたということです。
ところがなかなかヒットせず、結局、数年で映画制作を中断します。その後、転機となったのが『リング』という本との出会い。ご存じのように、映画として大ヒットするわけですが、その後、一瀬さんは自分のオリジナリティにこだわりを持って、映画作りをされているようです。
一瀬さんの場合、表現があまりよくありませんが、自我を押し通すという、ある意味では、顧客の声を聞かない方法で映画作りを進めています。ところが、それが逆に魅力を作り出しているわけです。
このような例は、他にもあります。独自性のある商品を作ろうとしている製造業では、「何でも顧客の声を聞けばいいものではない」どころか、「顧客のいうことは聞くな」とまでいっていたりします。
ところが、これはちょっと間違えると、作り手側の論理で作られた、自己満足な商品になってしまうこともあるわけです。マーケティングでも、かつては、作り手が作ったものをどのように売るかという、プロダクト・アウトの考え方が主流でした。しかしながら、時代とともに、お客様の声をきちんと聞いて商品を作っていくという、マーケット・インの考え方に変わってきています。
それを考えると、「顧客の声を聞くな」というやり方は、かつてのプロダクト・アウトに逆戻りしているともいえるのです。
しかし!
それはそれで、魅力のある商品ができてしまったりする・・・
一体どういうことなのでしょう?!
要は、作り手側が、その分野の最先端でいられるかどうかではないでしょうか。最先端というのは、技術の最先端ではなく、顧客、商品の使い手としての最先端です。特定の領域については、知識も豊富で、商品についても詳しい。当然、使い手の側として、それぞれの商品の善し悪しを知っている。そのような状態なら、自分が欲しいものを作れば、自然と魅力的な商品ができあがり、多くの人から支持されるというわけです。
顧客の声を聞くことも大切ですが、まずは、自分自身が惚れ込むような商品になっていることも大切なことでしょう。
自分なら買うかどうか?
自分ならお金を払うかどうか?
それが、第一歩のような気がします。
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