教育熱心な人は、本当に人を育てられるのか

教育の対象が子どもの場合。教育熱心な親とそうでない親を比較すると、恐らく、教育熱心な親を持つ子どもの方が勉強ができる(成績がよい)傾向が高いと思います。なぜなら、教育熱心な親の方が子どもにしっかりと勉強させるからです。

大抵の子どもは、学校の勉強を進んでやろうとはしません。勉強より遊び。勉強よりテレビ。勉強よりゲーム。他にやりたいことはたくさんあるので、勉強は後回し。それが普通の子どもです。

そのような状況の中で、教育熱心な親は、小さいときから子どもを塾に通わせるとか、家庭教師をつけるとか、何らかの教材を与えるとか、何らかの方法で子どもに勉強させます。すると、日頃からあまり勉強していない子どもと差がつきます。教育熱心な親を持つ子どもは、勉強ができる(成績がよい)子どもになりやすいのです。

ただ、これは対象が子どもで、範囲が学校の勉強だということに注意が必要です。

これがもし、楽器の演奏とか、スポーツとかだと、話は少し違ってきます。もちろん、熱心に指導されている子どもの方が上達は早いでしょう。ただ、楽器とかスポーツの場合は、学校の勉強と比較すると本人の持っている才能、素質の影響が大きくなります。同じ指導でも上達の早い子と、そうでない子の差は学校の勉強よりも大きくなります。熱心に指導すれば、ドンドン上達するというものでもありません。指導者の力量が問われる部分も大きくなってきますし、本人の才能、素質による部分も大きくなります。

要は、教育熱心、指導熱心なら、子どもが育つとは限らない分野があるということです。

では、対象が大人の場合、会社の部下や後輩だとしたらどうでしょう?

熱心に指導すれば、部下は育つのでしょうか?

答えはイエスでもあり、ノーでもあります。

学校の勉強のように、熱心に教育すれば比較的順調にレベルアップする分野と、音楽やスポーツのように熱心にやったからといってそれが結果に結びつくとは限らない分野があります。指導者の力量に大きく左右される分野もあります。

当たり前といえば、当たり前のことです。

では、なぜ、そんな当たり前のことを、くどくど書いているのか。

それは、教育熱心な人は、自分が熱心に教育しているからこそ、「これだけやっているのに、どうしてできないんだ?」という思考に陥りやすいからです。

子どもの場合と同様に、熱心にやれば、必ず社員が育つというわけではありません。やらないよりはやった方がいいに決まっていますが、その結果は、やり方にも左右されますし、やる内容にも左右されますし、指導者の力量にも左右されます。

何かをすれば、即、結果に結びつくものではないのです。

もちろん、やり方次第では、すぐに効果が出てくる場合もあります。でも、あくまでも「やり方次第では」です。何でもいいから、何かやれば結果に結びつくわけではありません。それこそ、指導者の力量次第なのです。

外部のセミナーや研修を受講させたり、社内で勉強会、研修を実施したりしていると、どうしても、それで教育している気になります。実際、教育していることは間違いありません。そして、その効果が出るのが当たり前のように思えます。でも、現実はそうとは限らない、ということを忘れてはいけません。

社員を育てるためには、何を教えるかだけではなく、職場環境をどう整えるか、どんな仕事を与えるか、評価や報奨をどうするかなど、様々な要素に気を配らなくてはいけません。さらに、それぞれに気を配っていればそれでいいのかといえば、それもまたそうではありません。単に気を配るだけではなく、それぞれの整合がとれているか、一貫性があるかも重要な要素です。

もし、「これだけいろいろやっているのに、なかなか社員が育たない」と悩んでいるとしたら、上記の要素をチェックしてみてください。

人を育てるための手段は、研修やセミナーだけではありませんから。