仕事の厳しさよりも、働く楽しさを教えよう

新入社員を迎える季節です。

いつの時代も、今年の新入社員は云々と、あれこれいわれます。最近の若い奴は、、、というのも、いつの時代にもいわれることのようです。

育ってきた時代、環境によって、やはり世代間のギャップがあることは仕方がないのでしょう。ただ、世代が違うと理解し合えないのかといえば、そんなこともないと思います。

さて、以前、ある会社の社長がこんなことを言っていました。

「鉄は熱いうちに打てという。だから、新入社員は、最初のうちにガツンと厳しく指導して、社会人としての心得をたたき込んでやるんだ」

新入社員研修ではもちろんのこと、実際に仕事に就いてからも、厳しく指導したようです。特にミスには厳しく、また報連相の徹底も相当厳しくやったようです。

その結果、春先に10人入社した新入社員が、秋頃には半分になっていました。もちろん、社長の指導方針の影響で、こういう結果になったとは限りません。新入社員の方の心構えがなっていなかったと考えられなくもありません。

それでも、これを「最近の若い奴は、簡単にやめてしまう」ということで片付けてもいいのでしょうか。

新入社員の半分がやめた真の理由は、はっきりとは分かりません。ただ、社長を初めとした先輩社員たちの厳しい指導について行けなかったという面が、まったく影響していないことはないでしょう。

この件に限らず、厳しく指導すれば人は育つと考えている方が結構いらっしゃるのですが、必ずしもそうとはいえないということを、理解して頂きたいなと思います。

厳しい指導がダメだといっているわけではありません。でも、何でもそうなのですが、その状況や目的に合わせて、いろいろと使い分けないと、成果は出ないのです。

新しく社会人になる新入社員の場合、学生時代とは生きる世界が変わります。バイトなどをやっていたとしても、それとこれとは別。社会人になって、必ず社会人の厳しさに直面します。それは、誰がどうやって防ごうとしても、必ずやってきます。黙っていても、新入社員は、社会の厳しさと向き合わなければならないのです。

ですから、そのことをあえて教える必要はないと私は考えます。社会人としてのルールとか、その会社の規則、仕事のやり方、部署でのルールなど、そういうことは、しっかりと教える必要があるでしょう。しかしながら、必要以上に厳しさを教える必要はないと思います。普通にやっていれば、新入社員は、社会人としての厳しさを感じるモノだからです。

むしろ教えなければいけないのは、仕事の楽しさ、働く楽しさです。あるいは、どうやったら大変な仕事を、前向きに、楽しく取り組めるようになるかという心構えです。

特に重要なのは、自分たちの仕事によって、社会にどんな貢献ができているか、お客様からどう喜ばれているかという、自分たちがどのように役立っているのか、どのような価値があるのかということです。

たとえば、ネジをつくっている会社があるとします。ある社員の担当は、ある一つのネジをひたすらつくること。考え方によっては、同じことの繰り返しで、面白くない仕事になってしまうかもしれません。ただ、ひたすら作り続けるだけなので、つまらない仕事になってしまうかもしれません。

でも、考え方次第で、楽しくもなれば、充実感を得られるようにもなります。

その一つが、そのネジがどのように使われていて、そのネジがあるからこそ、ある商品が完成するということを教えるということです。

「お前がつくっているネジが、○○会社の■■商品に使われていて、このネジのおかげで、耐久性がアップしているんだ。実は、うちは、○○会社から本当に評価されてるんだよ」

こんなことをいわれれば、ネジをひたすらつくる仕事だとしても、誇りを持つことができます。

また、ネジをつくる技術が、少しずつ上がっていることを認めてあげることもやる気になります。たとえば、最初は製品レベルのネジをつくることができず、少し訓練をしてからやっとつくることができるようになったとします。そうすると、この段階で自分の技術レベルが上がったことを実感できます。技術レベルが上がったことを実感できれば、仕事に対しての意欲が増幅します。

ですので、適当なタイミングで、「これだけのネジをつくれるようになったら、次は、△△(もっと難易度の高いネジ)をやれるな」などと声をかけたりすると、モチベーションを上げることになります。

品質だけではなく、スピード面でもいいでしょう。これまでは1時間に60個だったけど、今は、1時間で80個もつくれるようになったなとか。もちろん、品質レベルを落とさずにです。

こういうことを上司や先輩が意識して伝えてあげれば、新入社員のモチベーションも高くなります。新入社員自身が、そういうことを意識しながら仕事をしていくようになれば、単純な作業であっても、一つひとつの仕事に対する集中力が高まりますし、仕事への意欲も湧いてくるでしょう。

そんなことをして、仕事に対する意欲を持てるようになれば、あとは自然と日々努力していくものです。新入社員なりに、目指すべき姿、目標ができてくれば、自然に努力をしていきます。

逆にいえば、仕事に対する意欲がない状態であれば、無理矢理何かをさせようとしても、効果はありません。

仕事に対する意欲がない状態で、あれやれ、これやれといっても、やらされているだけで、ただの苦行になってしまいます。

仕事に対する意欲がない状態で、「どうしてこんなことができないんだ」といわれれば、「どうせできないよ」といじけるか、「こんな仕事やりたくないんだ」と不満を募らせるだけです。

仕事に対する意欲がない状態で、「もっと勉強しろ」とか、」「もっと努力しろ」とか、「もっと真剣にやれ」とか、いろいろいったとしても、あまり本人の心には響きません。

逆に、仕事に対する意欲が湧いてきた状態であれば、多少厳しいことや耳に痛いことをいっても、きちんと受け止めるでしょう。厳しい指導も、むしろ感謝されるかもしれません。

厳しい指導が生きてくるのは、本人がもっと成長したい、もっといい仕事がしたい、こんな風になりたいなど、仕事について自分なりの目標があり、意欲を持っている状態のときだけなのです。

そのような状態にするためには、まずは、仕事の楽しさや働くことの意義などを、しっかりと教えることが重要だというわけです。

人の成長には時間がかかります。あまり余裕はないかもしれませんが、焦ったからといって、すぐに戦力になるわけでもありません。長い目、温かい目で見守ってあげることが重要ではないでしょうか。

そうしていると、「あいつも、いつの間にかずいぶん成長したなぁ」と、にんまりする日が来ますよ。