人をやる気にさせる仕組みづくり

以前、ある食品スーパーのリサーチをしたことがあります。

そのスーパーでは、パートさんが以下のように3種類に分類されていました。

2~3時間の短時間勤務
1日6時間ぐらいの短時間勤務で、週3~4日の勤務
フルタイムの勤務で店舗の異動はなし

さらに、正社員も2種類になっていました。

引っ越しを伴わない程度で、異動あり
引っ越しを伴う異動もあり

そして、一定の条件を満たす必要があるものの、正社員がパート社員になったり、パート社員が正社員になったりと、働き方を自分の都合で変えられる仕組みになっていました。

たとえば、正社員で働いていた社員が結婚して子供ができたとします。それまで通りのフルタイム勤務は難しいので、産休、育休明けの勤務を短時間勤務のパート社員として働きます。その後、子供が大きくなって、フルタイムでも働けるようになったら、フルタイム勤務のパート社員、さらに正社員に戻ることができる、ということです。

どうしてこのような制度を作ったのかというと、優秀な女性社員が結婚・出産で退職せず、仕事を続けて欲しいからです。食品スーパーということもありましたが、女性社員が重要な戦力だったのです。

重要な戦力といえば、このスーパーでは、パート社員を売り場のリーダーにしたり、発注責任者にするなど、単なる作業をするだけではなく、自分で判断して行う業務も担当させていました。主婦の感覚を生かして、いい売り場づくりに貢献してもらおうという意図です。

私がこのスーパーをリサーチした頃は、この制度ができて数年が過ぎており、すでに会社の中に定着していました。パート社員だった女性が正社員として活躍していたり、正社員だった女性が、子育てのためにパート社員として売り場のリーダーを務めていたり、いわゆる普通のパートのおばさんが売り場責任者としてバリバリ活躍していたり、うまくこの制度が機能している状態でした。

しかしながら、最初から、うまくいったわけではありません。

うまくいかなかったことの一つは、パート社員が発注業務や売り場づくりなど、自分で考える仕事を嫌がったということです。ちょっと空いている時間があるから、パートでもやろうという女性にとっては、あれこれ自分で考えて、自分で判断する仕事が面倒だったのです。時給は高くなくてもいいから、レジうちとか、品出しとか、あれこれ考えなくてよい、単純な作業をしたいということだったのです。

でも、徐々に、少しずつやってもらうようにしていたところ、単純作業がいいといっていたパート社員も、だんだん仕事が面白くなってきて、自ら進んで陳列を変えたり、工夫して発注するようになっていったといいます。しばらくすると、担当する売り場のリーダーとして、自ら率先して動くことはもちろん、後輩のパート社員に指導したりもするようになったといいます。

主婦のパートや学生のアルバイトなどは、気軽に休んだり、責任感が足りないこともあります。仕事に対する姿勢も積極的とはいえず、とりあえず与えられたことをやるだけということもあります。だから、その程度の仕事をやらせているだけという会社もあります。

もともと、パートやアルバイトには、あまり期待をせず、単純作業をこなす人工としてしか考えていない会社もあります。

そういう会社では、働くパートやアルバイトも、仕事として必要以上のことはせず、とりあえずこなすだけにとどまります。

会社がその程度しか望んでいないので、働く側もその程度の意欲しか持ちません。

これは、働く側に意欲がないから、そんな状態になっているのではありません。会社側が、働く人の意欲を引き出せていないから、そんな状態なのです。

パート社員は、短時間勤務ではあるものの、働く意欲は十分にあり、難易度の高い業務でもこなすことができると、会社側が考えていれば、そのように働いてくれるようになります。

反対に、パート社員は、限定的な、短時間だけの勤務だし、働く意欲はあまりないものだと考えていれば、その程度の働きしかしなくなります。

もちろん、それなりの仕事をパート社員に期待するなら、待遇面でもそれなりのものにする必要があります。昨今いわれる同一労働同一賃金などもそうですね。

さて、人をやる気にさせる仕組みを作ろうと思ったら、働く人は意欲的で、一生懸命働き、会社に貢献してくれるものだという前提で考えていく必要があります。

「頑張って働いてくれることを期待しているので、一定の成果が出たら、それに報いますよ」

そういう制度を作るべきです。

反対に、

「きちんと監視していないと、どうせ仕事をさぼるだろうと思うので、さぼったらペナルティですよ」

こういう考えで制度を作ってはいけません。

結果として同じような制度になったとしても、細かいところに違いがあって、前提となっている考え方、意図が透けて見えるものです。社員はそれを敏感に感じ取って、それ相応の対応になります。ですので、社員の意欲を引き出したかったら、社員は働く意欲が旺盛で、頑張ってくれるはずという前提のもと、その頑張りに報いるような制度を作るべきだということです。

そして、もう一つ重要なこと。

それは、仕組みを作っただけでは、仕組みはうまく機能しないということです。単に、頑張ってくれたらそれに報いますよという制度だけでは、いくら意欲的なパート社員がいても、それほど変化は生じません。

人間は変化を好まないので、何となく現状維持のまま過ごしていくからです。

そこを変えるのは、トップリーダーと現場リーダーの役割です。トップは、そのように期待していることを伝え、期待に応えてくれたらきちんと報いることを明言します。頑張って欲しいと期待を伝えます。

そのことで、パート社員にも、少しずつ、頑張ろうという気持ちが芽生えてきます。

次は、現場リーダーが、具体的に期待している業務を任せていくのです。少しずつでいいので、というか、少しずつしかやれないと思いますが、少しずつ難易度の高い業務に挑戦してもらい、できるようになったら次のステップへと導いていきます。

そのプロセスの中では、必ず、失敗して落ち込んだり、うまくできなくて嫌になったり、ネガティブな感情になることがあるので、励まし、勇気づけて前向きに取り組むように仕向けます。決して、できないことを責めたり、もっとしっかりやれなどと叱ってはいけません。それよりも、以前よりも少しでも進歩したところに目を向けて、「ここはダメだったけど、こっちはうまくできるようになってるから大丈夫」などと、励ますことが重要です。

そうやって励まし、勇気づけているうちに、徐々にうまくできるようになり、自信が付いてきて、意欲が高まり、前向き、積極的に動けるようになっていきます。

そうなると、新しい制度が意味を持つようになります。

新しい制度が社員の意欲を高めるというよりも、意欲の高まった社員に対して、それを継続してもらうために制度があるというイメージです。

社員の気持ちの変化を表現するとこんな感じです。

「最初は、面倒くさいし、難しいし、こんな仕事やりたくないと思った」
「でも、頑張ってやっていたら、自分でもこれだけの仕事ができるんだと思えるようになった」
「ちょっと難しいけど、だからこそ、やりがいがある仕事だと思えるようになった」
「難しいこともあるけど、うまくできるとうれしい」
「成果が出ると、その分認めてもらえることもうれしい」
「これからも頑張って成果を出せるようにしよう!」

繰り返しますが、制度が人の意欲を高めるのではありません。

制度が人のモチベーションを高めるわけではありません。

人のモチベーションを高めるのは、周囲の人(特にリーダー)です。

社長は、制度を作るだけではなく、うまく制度が機能するように仕向けなければなりません。

仕組みづくりとは、制度をつくることだけではなく、うまく機能するように人を動かしていくことでもあるのです。

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