7-3:チーム内で競争させる

全日本女子バレー編(3/4)
ライトの高橋選手は、とても器用で、うまい選手だそうです。どんなプレーも、軽々とマスターしてしまうのです。
そんな素質があるために、柳本監督には、練習に対する必死さが足りないように見えたといいます。
「オリンピックでメダルを取るためには、必死になって練習させなければダメだ」
そう考えた柳本監督は、キャプテンの吉原選手に、高橋選手と同じライトのポジションの練習をさせました。


吉原選手は、もともとセンターの選手で、オリンピックでもセンターで出場しました。が、代表メンバーが集められた当初のポジションはライトだったそうです。
ただ、監督の頭の中では、高橋選手がライト、センターに吉原選手、という構想が出来ていました。それにもかかわらず、吉原選手にライトのポジションを練習させたのです。
キャプテンの吉原選手が控えに回ることは考えられませんから、高橋選手はポジションを奪われてしまうという危機感を持ちます。必死になって練習する・・・というわけです。
吉原選手も、高橋選手が必死に練習して、実力が上がってくるのを見て、安心してはいられないと、さらに、練習に励んだようです。
もうすぐ試合というところまで来たところで、吉原選手をセンターに戻したと言います。ギリギリまで、ライバルとして競わせようという目論見だったのです。
話はここで終わりではありません。
柳本監督は、次の標的を決めていました。センターの杉山選手です。吉原選手が、センターのポジションに復帰すれば、同じポジションの杉山選手がライバルになります。そのライバル心に火をつけようとしたのです。
全日本チームは12人ですが、2つのチームに分かれて試合形式の練習をすることがあるそうです。2つのチームの分け方は、レギュラー組と控え組。実践形式で、セッターとアタッカーのコンビネーションをあわせるために、試合形式で練習をするのです。
この練習試合で、それまで常にレギュラー組に入っていた杉山選手を控え組に回し、レギュラー組のセンターを吉原選手に任せます。
このことで、淡々としている杉山選手の表情が変わったといいます。吉原選手に負けじと練習をするようになったのです。
この他にも、大型19歳コンビの大山選手と栗原選手のライバル心をあおる起用もしています。
オリンピック最終予選で、大山選手は、あまり調子が上がりませんでした。本人も少し悩んでいます。当然、交代です。一方、栗原選手は、絶好調で大活躍。大山選手は、ライバルの活躍をベンチで見守るしかありません。
次の試合。ここで大山選手がスタメンに復活しても良さそうなものですが、あえてベンチにおきます。そして、その試合は一切出場させません。一方の栗原選手は、またもや大活躍。
大山選手の心の中は「試合に出たい」という気持ちでいっぱいになります。
その気持ちが、ちょうどピークになる頃を見計らって、柳本監督は、大山選手を試合に起用するのです。調子が出なくて悩む気持ちから、「とにかく出たい」という気持ちになったところで、試合に起用したわけです。
その気持ちが、次の試合で爆発します。
復活した大山選手は、今度は大活躍。すると、今度は、栗原選手をベンチに下げ、その姿を見させます。栗原選手を休ませるのと同時に、ライバル心を燃え上がらせようという柳本監督の作戦です。
このように、柳本監督は、あの手この手で選手を競わせて、レベルアップを図りました。
「競わせて、成績を伸ばす」
このことは、別に、バレーボールだけのことではありません。その他のスポーツでもありますし、企業でも行われています。
ただし、スポーツの場合と、企業の場合の違いに注意しないと、競争させても逆効果になってしまうこともあります。
お分かりだと思いますが、スポーツの場合は、目標が明確です。そして、その目標は、選手自身が、自分で実現したいという目標です。今回の女子バレーであれば、「オリンピックでメダルを取る」だし、プロ野球なら優勝する・・・
目標はきわめて明確で、監督の目標ではなく、選手自身の目標でもあります。言い方を変えると、選手の心の中は、火が燃えている状態です。しかも、自分で自分の心に火をつけられるような状態。
ところが、企業ではそうも行きません。
まず、目標が明確でないこともあります。これではどうしようもありません。また、目標は明確だけど、社員自身が「心から達成したい」と思う目標ではないこともあります。
その状況の違いを考慮せずに競わせても、社員たちはただ競争に疲れてしまうだけです。
競争をあおる前に、目標の内容です。社員自身が、心から「やりたい」と思えるような目標。「達成したらいいな」と思えるような目標。
そんな目標を、上司が設定しなければならないのです。

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