上司のひと言で部下は変わる
誰でも就職するときには、それなりの夢と希望を持っていることと思います。
就職難の時代だと、自分の希望する会社からはなかなか内定が出ず、仕方がなく就職を決めたという場合もあるかもしれません。そういう場合でも、これから始まる社会人の生活ですし、何らかの希望、期待があると思います。
ましてや、自分が希望する会社に入社が決まったのなら、ワクワクドキドキ、夢と希望に胸膨らませて入社式を迎えるに違いありません!!
そうでもないか???
もちろん、人によっていろいろだとは思いますが、社会人になりたての頃なら、どんな人でも、周りの働きかけ次第で、ものすごくやる気になったり、前向きに、積極的に仕事に取り組むようになります。反対に、こんな会社で働いてられないよ。。。と、やる気を失い、最低限の仕事をこなすだけになってしまったりもします。
それは、元々その人が前向き、積極的な性格だとか、どちらかといえばネガティブな性格だとか、そういうことではありません。多少は影響するでしょうが、本人の性格よりも、周りの対応、働きかけの方が大きな要因になると思います。
たとえば、この私。入社2年目か、3年目の話です。
その仕事は、法律とか社内のルールとかをしっかりと守らなければならない仕事で、関連する法律やルールについて精通する必要がありました。もともとそういう仕事をしたいと思っていたわけではないので、あまりやる気はなかったのですが、配属されてしまったからには仕方がありません。とりあえず、まじめに取り組んでいました。
でも、覚えなければいけないルールや法律がたくさんあって、よく分からないのです。で、分からないときは、すぐ先輩に聞いてしまい、先輩のアドバイスに従って仕事をこなしていました。そんなある日、いつものように先輩に質問すると、その先輩がいいました。
「おのせくん、課長からね、おのせくんに教えるなっていわれてるんだ。いろいろ勉強した方がいいから、自分で考えるようにっていってたよ。だから、自分で調べて、確認した方がいいよ」
確かに、それはその通りで、何を調べればいいのか分かるときは、自分なりに調べて確認をしていました。でも、どこから手をつけたら良いか皆目見当が付かないこともあるのです。知識がないので、何をどうしていいか分からないというケースです。そういうときは、すぐに先輩に聞いていました。ところが、課長は自分で考えた方がいいといっているらしいのです。
そこで、それからは、とにかく自分ですべてを調べて、確認するようにしました。でも、どうやって調べたらいいか分からないことを調べているので時間がかかります。課内で一人、残業になることが多くなりました。
「どうして俺だけ・・・」
そう思いましたが、上司が自分で調べて、自分一人で対応しろといっているのだから、そうするしかありません。成長するために勉強しろという意味だとも思ったので、一人だけ残業になっていても、人に頼らず、自分でやっていました。
そうして、1年目が終わった頃。
前年度を振り返るための会議が、課内で行われました。年度の業績の発表など全社的な話が終わり、課内の実績、業務についての話になりました。
そのときの課長の言葉に、私は大きな衝撃を受けました。
「今年は、おのせくんが一人で残業して頑張ってたけど、自分で分からないことは先輩に聞けばいいし、作業量が多ければ、周りの人に手伝ってもらったりすれば、一人でそんなに残業することもないんだよね」
「えぇっ?!」
なんとまあ、そんなこといわれなくても分かってるけど、自分一人でこなすのが自分のためであり、それを課長が望んでいると思ったので、一人で残業になっても、何だかよく分からないと思っても、何とか一人で頑張っていたのです。
そ・れ・な・の・に・・・
「こんなのってあるか~い!」
未熟な私は、その日以来、その仕事にすっかりやる気をなくしました。異動したい、異動したい、異動したい、そんなことばかりを考えるようになり、まあ何となく仕事をこなすだけになりました。
今となっては、上司がどのように考えていたのかも分かりませんし、誤解があったのかもしれません。でも、とにかく、私は、上司の言葉でやる気を失いました。別に上司のために仕事をしているわけではないのですが、当時は、その上司の言葉でやる気を失い、他の部署に移りたくなってしまいました。
若いうちは、そんなこともあるのではないかと思います。
その後、何年か過ぎ、別の部署で働いていた頃のこと。
そこでは、ちょうど人手が不足していて、私は一人でいくつかの仕事を兼務していました。兼務しているので、仕事量が多くなり、この時も一人で残業が多くなりました。誰かに頼むといっても、周囲のメンバーにはそれぞれの担当があり、私にはその仕事を頼む人がいません。仕方がないので、一人でこなして、残業が多くなってしまっていたのです。
そんなとき、ある先輩から言われました。
「おのせくん、こんなの来てるんだよ」
それは、人事部からの書類で、どれだけ残業しているかが記されていました。どうやら、一定量以上の残業をしている人間がピックアップされていて、残業しないように上司から指導するための書類だったようです。
でも、私は、そんな書類が来ていることはまったく知りませんでした。上司からも何もいわれたことがありませんでした。
「へぇ、あんまり残業しちゃいけないってことなんですね。でも、課長から何もいわれたことありませんよ」
私が言うと、先輩がこんなことを言ったのです。
「課長がね、いってたよ。あいつは人の3倍仕事してるんだから、このぐらいしょうがないって」
今思うと、これを喜んでいいのかどうか分かりませんが、そのときの私は何となくうれしかったのです。何がうれしかったかというと、いろいろ兼務していること、自分が頑張っていることをちゃんと分かってくれているんだというところです。
もっとも、これって、下手すると、通常以上の仕事をさせられていて、ブラック企業だぁということにもなりかねませんね。
でも、私は、こちらのケースは、とてもうれしかったのです。そして、その後、もっと仕事に精を出すようになりました。でも、なるべく残業にならないように努力するようにもなりました。上司からいわれたわけではないんですけどね。
この2つのケースは、私がやっていたことは、どちらも同じようなことです。仕事の内容は全然違いますが、多くの仕事を抱えて、一人でこなそうとしていたという意味では、どちらも同じです。その結果、残業が多くなっていたというのも同じです。どちらの時も、心の中に「どうして自分だけ残業になるんだろう?」という思いがちらついていたのも同じです。
でも、上司のひと言、対応の違いで、私のモチベーションはまったく違ってしまいました。
何が違っているかというと、前者は、私が頑張っていることを認めてくれていないと感じ、後者は、認めてくれていると感じたということです。
前者は、自分のことを理解してくれていないと感じ、後者は理解してくれていると感じたともいえます。
その結果として、前者の場合、上司が言っていることはある意味もっともな話なのですが、全然聞く気になれませんでした。むしろ、何いってるんだと反抗的な気持ちになっていました。いっていることは、もっともなことなのに。
逆に、後者の場合は、残業を減らせともいわれていないのに、勝手に減らす努力をしていました。仕事の手を抜くとかそういうことではなく、より効率的に仕事をこなすことで、残業を減らせるように努力をしたのです。何もいわれていないのに。
人間、誰でもこのようなことはあると思います。
どうでしょう?
日頃の、自分の周りの人への接し方。
ちょっとした違い、ちょっとした気遣いで、お互い気持ちよく仕事ができるようになります。
ちょっとしたひと言で、もっと頑張ろうという気になったりします。
上手に接していれば、職場全体が明るくなり、成果も上がります。
今一度、見直してみてはいかがでしょうか?
投稿者プロフィール

最新の投稿
変革ストーリー2021.01.11【企業変革ストーリー】第一章「一念発起」 経営のヒント2020.02.24上司のひと言で部下は変わる 経営のヒント2020.02.17人前で話すのが苦手だった私が、今では講師になりました… 経営のヒント2020.02.10経営者やリーダーに人望は必要なのか?