逆さまのピラミッドが社員の意識を変える

組織図を上下逆にした「逆さまのピラミッド」という考え方があります。
この形を採用している会社もちらほら見られますが、
組織図が変わっただけの会社も少なくありません。
本当に顧客志向の会社をつくるためには、この「逆さまのピラミッド」を社員のマインドの中にも定着させることが必要です。

『逆さまのピラミッド』という本があります。カール・アルブレヒトというコンサルタントが書いた、全米で40万部売れたベストセラー(本の帯によれば)です。

アメリカでは1988年に出版され、日本語版は1990年に出版されました。

今でも通用する『逆さまのピラミッド』

もう30年も前の本になりますが、その基本的な考え方は、今にも通用するものです。ひょっとすると、発売当時よりも、現在の方が、より重要性が増しているかもしれません。

従来の経営理論は、製造業を想定したものでした。というのも、産業革命以降、製造業が世の中を変え、社会の成長を促進してきたからです。生活必需品などの大量生産が進み、モノが充実することで、人々の生活は豊かになり、それと共に製造業も成長してきました。世の中の中心は製造業だったので、経営理論は製造業を想定したものになっていたわけです。

ところが、モノが充実するにつれて、サービス業が成長・発展してきました。徐々にそこで働く人々も増え、サービス業の売上もどんどん増えていきました。

それに合わせてサービス業のための経営理論が研究されるようになってきました。

この本もその一つですが、その特徴的な考え方が「逆さまのピラミッド」です。

そして、世界のサービス産業化はますます進み、この本が出版された1990年の頃よりも現在の方が、さらにサービス業が発展してきています。

ですので、この本は古い本ですが、基本的な考え方は今でも通用するものなのです。

さて、先ほどから「逆さまのピラミッド」という言葉が何度も登場しているのですが、それが何であるかを説明します。

「逆さまのピラミッド」とは、サービス業の組織のあり方

「逆さまのピラミッド」とは、それまでの中心だった製造業の組織の考え方とは違う、新しいサービス業としての組織のあり方を表したものです。

具体的には、以下のような図になります。

 

こちらの説明の前に、一般的な製造業の組織図を見てください。以下の図が、一般的な組織図です。製造業に限らず、サービス業でもこのような組織構造になっている会社は存在します。

一番上に経営トップ(社長)がいて、一番下には現場で働く担当者がいます。その間に、現場を束ねる課長、課を束ねる部長がいるという、トーナメントの図のような組織図です。

社会人なら、どなたでもご覧になったことがあるものだと思います。

従来の組織図は、管理・服従を表現したもの

この組織は、組織の上位者が会社を管理し、服従させるものです。社長の命令で、部長が動き、部長の命令で課長が動き、課長の命令で担当者が動くというようなイメージです。

どこにでもある、普通の会社のイメージだと思います。

このような組織構造は、今でも、製造業でもサービス業でも、多く存在しています。それだけ一般的なものです。

一方、「逆さまのピラミッド」とはこんな風になります。

簡単に言えば、従来の組織図が上下逆さまになったものです。

もう一つ重要な点があるのですが、お分かりになるでしょうか?

そうです。顧客が組織図に入っていて、しかも、一番上に位置しているところです。

「逆さまのピラミッド」は、顧客重視を明らかにしている

よく「顧客第一主義」とか「顧客志向で考える」とか「お客様は神様です」とか、顧客の重要性を言葉で表現しています。顧客が企業にお金を払い、それで事業が運営され、社員に給料が払われるのですから、企業にとって顧客が重要というのは当然のことです。

ところが、言葉では「顧客第一」といっていても、様々な制約から企業の都合が優先されることは珍しくありません。口では「顧客第一」といっていても、実際には「自分たち第一」になってしまっているのです。

その原因は、組織図の中に顧客が入っていないからということではありません。社員の意識の中に、「顧客第一」という考え方を浸透できていないことが問題です。ただ、顧客を含めた「逆さまのピラミッド」を見てしまうと、組織図の中に顧客が入っていない従来の組織は、顧客を軽視している様にも思えます。

名は体を表すではありませんが、組織図がその会社の考え方を表しているからです。

逆の言い方をすれば、本当に「逆さまのピラミッド」の考え方で組織を運営していている会社は、顧客を重視し、真の顧客志向の会社だといえます。

顧客志向の会社をつくるためには、顧客と接する担当者が大切

さて、顧客を重視し、真の顧客志向の会社となるためには、何が重要になるでしょうか。

いろいろあるとは思いますが、真っ先に考えなければならないのは、顧客と接する担当者です。

どんな企業でもそうですが、自分に対応してくれた担当者の印象が、その企業の印象を決めてしまいます。特に、サービス業の場合は、商品(サービス)を提供するのが担当者なので、より一層その担当者の印象が強く残ります。

実際、担当してくれる人のイメージがいいから、説明がいいから、親切にしてくれるからなどの理由で、その企業を選ぶことも少なくありません。

そうすると、いかに顧客と接する担当者が、顧客にとって魅力的な存在になれるかが、企業の命運を握っているのです。

そこで、従来の組織図を上下反転させた「逆さまのピラミッド」の登場になるわけです。

「逆さまのピラミッド」は第一線の支援を重視

「逆さまのピラミッド」では、従来の組織図とは違い「顧客」が組織図の中に含まれています。しかも、一番上です。それだけ重要な存在だということです。

そしてその次に位置しているのが担当者です。

その下が管理者、一番下が経営トップ(社長)です。

「逆さものピラミッド」は、上司から部下へ指示・命令をして、管理・統率するのではなく、管理者が現場の担当者を支援することを表しています。

さらに、現場の管理者を支援するのが経営トップになります。

現実的には、もっと階層が深くなると思いますが、考え方は同じです。

この考え方ができているかどうかで、本当の顧客志向の会社になれるかどうかが決まります。

「逆さまのピラミッド」は社員の意識を変える。ただし…

この「逆さまのピラミッド」の考え方で組織を運営していけば、社員の意識は確実に変わります。自分たちが主役であり、自分たちがしっかりやらなければいけないという自覚が芽生えます。それなりの権限を与えられていれば、その範囲内でイキイキと働くようになるでしょう。

しかし、この組織図を取り入れている企業が、すべてそうなるわけではありません。

それは、組織図は「逆さまのピラミッド」になっているが、その企業に根付いている基本的な考え方は従来通りの会社が多いからです。

組織図を変えるのは、簡単です。図を書き換えて、「○月□日からこれで行く」と通達を出せば、○月□日からは「逆さまのピラミッド」を採用した会社になります。

でも実際には、その考え方を社員全員が理解し、その考え方で行動するようにならなければ、変わったのは組織図だけです。

そして、そのような企業が多数あります。

組織図を変えれば、組織が変わるというのは、大きな間違いです。

組織図を変えることは、組織が変わるきっかけ、スタートの合図に過ぎませんこれをきっかけに、社員一人ひとりの意識を変える努力をしなければ、何も変わっていきません

そのために、まず大事なのは、トップが意識を変えること。

行動、発言を変えること。

トップが変わらなければ、いつまでたっても会社は変わりません。

誰でも、どんな会社でも、従来の意識が常識となって、身体に染みついています。それを変えていくのには、意識して、粘り強くその常識を変えていかなければなりません。

繰り返しになりますが、組織図を変えただけでは、何も変わりません。

組織図を変えるのをきっかけにして、社員の意識を変えるような取り組みを始めなければなりません。

そして、それを粘り強く、あれこれ手を変え品を変え、実行し続けることが必要です。

しばらくの間は大変ですが、定着してきたら後は楽です。

担当者が勝手にお客様をもてなします。

担当者が勝手にお客様をファンにします。

担当者が勝手に売上を上げてくれます。

そうなったらいいですよね!

それを目指して「逆さまのピラミッド」にしてみませんか?